行動制限解除に伴い賃金アップも、生活は楽にならない不思議
厚生労働省が毎月発表している『毎月勤労統計調査』。
2022年5月分の速報によると、「所定内給与*1」は24万7,975 円で前年同月比1.2%増。
さらに「きまって支給する給与*2」は26万6,314円で1.5%増、「現金給与総額*3」は27万7,016円1.0%増となりました。
さらに一般労働者*4だけに焦点をあてると、「所定内給与」は 31万6,577 円で1.2%増、「きまって支給する給与」は34万1,870円で1.4%増、現金給与総額は35万7,047円で1.2%増。
手取りにすると、コロナ禍の行動自粛から徐々に経済が動き出してきた結果が反映されたものになりました。
*1:毎月支給される給与から、時間外手当を除いたもの。基本給・職務手当、通勤手当、住宅手当、家族手当などが含まれる
*2:「所定内給与」のほか、時間外勤務手当や休日出勤手当のように所定労働時間外の労働に対して支給される「所定外給与(超過労働給与)」も含まれる
*3:「きまって支給する給与」と「特別に支払われた給与」との合計額
*4:常用労働者を「一般労働者」と「短時間労働者」に区分し、「短時間労働者」以外を「一般労働者」とする この効果は労働時間にも。
出勤日数は平均17. 0日と前年同月比と同水準ながらも、「総実労働時間」は131.1 時間で0.8%増。特に所定外労働時間は9.7 時間で5.2%増と、コロナ禍で減った仕事が残業しなければこなせないほどに回復してきたのでしょうか(リモートワークの解除の増加で、見えていなかった残業が見えるようになったという意見もありますが)
残業時間増は給与にも反映され、少ないながらも私たちの懐を温めてくれているようです。
ただ一向に経済回復の実感がもてないのは、やはり最近の急激な物価高のせいでしょう。
賃金額を物価指数で割った値であり、賃金の本当の値打ちを表した「実質賃金」は、前年同月比で1.8%減で、2ヵ月連続のマイナスとなりました。
また2020年の平均を100とした5月の実質賃金指数は85.2。
給与の上昇が物価の上昇に追いつかず、給与は大きく目減りしているということになります。
この状況が続けば、年間通じて実質賃金はマイナスになる可能性が高いでしょう。
給与が増えないなら投資で増やす…とはいかない、哀しい日本人
およそ27万円。これが日本のサラリーマンの平均的な手取り額。
金額自体は前年と比べて増えてはいるものの「2年前と比べて実質8割強でしかない」というのがリアルなところ。
各所から「ムリ」という声が聞こえてきます。
この物価高、長く続いてもいずれは収まるであろうという楽観的な見方が大半ですが、給与があがるかといえば多くが悲観的です。
世界主要国の賃金の伸び率をみてみると、1995年を100とした際、米国では222と2倍以上に増え、お隣韓国に至っては291と3倍弱に増加。
著しい経済成長がそのまま給与にも反映されています。
それに対して、日本は95。OECD調査33ヵ国で唯一、マイナスを記録、つまりこの30年ほどで唯一貧しくなった国、それが日本なのです
(関連記事: 『世界ランキング「賃金上昇率」…世界主要国33ヵ国で比較』 )
そのようななか、日本人ができることといえば自助努力といわれてきました。
給与があがることを期待するのではなく、自らが所得を増やしていく工夫をするしかない、というわけです。
国も貯蓄から投資へと転換させようと躍起になっていますが、事がうまく進んでいるかといえば、難しいといわざるを得ません。
金融広報中央委員会『金融リテラシー調査2022年』によると、「過去に 1 か月の生活費を超える金額のお金を運用したことがあり ますか。」の問いに対して、26.9%が「資産運用を行った」と回答。
同様の質問に対し、2016年は24.8%、2019年は25.5%と、調査回ごとに増加しているとはいうものの、これだけ資産運用の重要性が叫ばれているなか、生活費以上の投資経験がない人が実に3/4を占めているのです。
その理由は明白で「投資するだけの元金がないこと」
生活するだけで精一杯、投資なんて……という日本人があまりにも多いということでしょう。
そこにきて急激な物価高。日本人はさらに窮地に追い込まれています。
自助努力を高らかに呼びかけても、いまの日本ではとても無理な話。
抜本的な変化が求められています。