東京都内を中心に、次から次へと誕生するタワーマンション。
好立地で設備は豪華、高層階なら眺望もいい……さまざまな魅力を感じて購入に踏み切り、そのおよそ7割は「ずっと住み続けたい!」と考えているとか。
満足度の高いタワマンですが、そこには「タワマンだから」のリスクも。
みていきましょう。
ずっと住み続けたい…タワマン購入者の7割が永住志向
高さ60メートル、階数20階以上のタワーマンション。
実際に住んでいる人は、なぜ「タワマン」だったのでしょうか。
東京・新宿が2019年に行った『タワーマンション実態調査』によると、最も多かったのが「交通の利便性」で64.5%。
「防犯面で安心」57.4%、「眺望が良い」47.5%と続きます。
【タワーマンションを選んだ動機】
交通の利便性:64.5% 防犯面で安心:57.4% 眺望が良い:47.5% 耐震性:37.7% コンシェルジュ等サービスの充実度:34.7% プライバシー性:26.3% パブリックスペースの充実度:25.0% 間取りが良い:23.1% 虫が少ない:19.7% ステータス性が強い:15.3%
出所:新宿区『新宿区タワーマンション実態調査報告書(令和元年度)』
より 新宿区という限られた調査ではありますが、昨今のタワマンといえば、駅前開発などとセットで計画されることが多く、とにかく好立地が売り。
やはり交通利便性の良さから選んでいる人が多いようです。
また付帯設備もタワマンの魅力ですが、「豪華な設備、使うのは最初だけ」というのが、タワマンを選ばない人たちの意見のひとつ。
実際はどうなのでしょうか。
同調査でどのような付属設備があるかたずねたころ、最も多かったのが「カラオケルーム」で69.6%。「パーティルーム」47.8%、「ゲストルーム」43.5%と続きます。
そのうち、「パーティルーム」「ゲストルーム」「フィットネスジム」について使用頻度について尋ねています。
「頻繁に使う」の割合は順に、27.3%、68.8%、55.6%。設備よって異なるものの、結構使われている印象です。
【住んでいるタワマンにある付帯設備】
カラオケルーム:69.6% パーティルーム:47.8% ゲストルーム:43.5% フィットネスジム:39.1% キッズルーム:21.7% 音楽設備:17.4% バーラウンジ:13.0%
出所:新宿区『新宿区タワーマンション実態調査報告書(令和元年度)』より 気に入って購入したタワマン、75.1%が「このマンションに住み続けたい」という永住志向。年齢が上がるにつれて、その意向は強くなっていきます。
【タワマン購入者の永住意識】 20代:52.0% 30代:57.4% 40代:63.4% 50代:68.8% 60代:75.9% 70代以上:83.1%
出所:新宿区『新宿区タワーマンション実態調査報告書(令和元年度)』より
永住意識も吹っ飛ぶ!?「タワーマンション」ならではのリスク
購入者の満足度が高いタワーマンション。
永住志向も強いですが、それを拒む問題も、同調査から読み解くことができます。
修繕積立金が足りない 修繕積立金は、「100 円/㎡超から 200 円/㎡」のタワマンが半数で、総戸数が少ないほど修繕積立金の単価が高い傾向にありました。
また「修繕積立金が足りない」というタワマンが48.0%と、こちらもほぼ半数。
総戸数や築年数による傾向は特に見られませんでした。
マンションの修繕は、12年に一度と推奨され、物件により頻度は異なるものの、将来を見据えて積立ていくもの。
お金が足りなければ必要な修繕も行えない場合も。
修繕不全があれば、資産価値にも影響を与えます。
賃貸住戸の増加 マンション管理運営で困っていることとして、31.8%が「賃貸住戸の増加」をあげています。
特別議決を成立するには組合員の3/4が必要ですが、賃貸入居者が多くなると同意を得るのが難しくなり、たとえば必要な修繕が行えないなどの弊害も。
コミュニティの希薄 タワーマンションの課題として多くあがったのが「コミュニティの希薄さ」
タワマンを選んだ際に、プライバシー性と回答したのが4人に1人いたことから、そもそも「隣人との交流は不要」と考えている人は多くいます。
コミュニティが希薄なことで問題となるのが、まず災害時。
どれだけの人が救助を必要としているのか、そのような把握も困難になり、被害増に繋がる可能性も。
また築年数が経つにつれて、どのタワマンも高齢化が課題となりますが、コミュニティが希薄なことで孤独死が増える、という問題にも直面しています。
災害時のエレベーター 地震や水害等、タワーマンションならではの不安があるかの問いに、53.2%が「ある」と回答していますが、そのなかでも最も不安に感じているのがエレベーター。
東京都が新たに発表した首都直下地震の被害想定でも、最大約2.2万台のエレベーターが非常停止し、最大1万7,000人が閉じ込め被害にあうとしています。
そもそも停電になるとエレベーターが使えず、階段を利用することに。
低層階であれば問題はありませんが、高層階ともなるとかなりハードです。
このようにタワマンには「ずっと住みたい」と思わせる魅力がある一方、終の棲家として考えるには「リスクもある」という側面も。
特に築年数が経つにつれて「お金が足りない!」という、想定していなかった事態に陥るケースが多く発生しています。
一生に一度の大きな買い物となるマイホーム。どのような形態であれ、良い面もあれば悪い面もあります。タワマンであれば、ほかのマンションにはない課題があり、それを知ったうえで購入するのがベストです。