2022/12/02 12:44

日本のおひとり様高齢者…「家賃滞納で強制執行」に潜む、恐ろしい実態

日本の持ち家率は、およそ6割。

年齢が上がるにつれてその割合は高まり、高齢者になると9割近くにもなります

ただし、一人暮らしの高齢者に限ると、その割合は6割近くにまで下がり、その分、賃貸派が増えます。

そこには「引越ししたくても叶わない」という高齢者を取り巻く問題があるようです。みていきましょう。

 

【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額

 

高齢者の5人に1人が1人暮らし…その3割が賃貸派

 

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会による賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』によると、2020年下半期、2ヵ月以上の家賃滞納率は1.1%。

100件に1件の割合で家賃滞納が起きています。

「家賃が払えないほど困窮している」というと、すごく遠い世界のように感じる人も多いと思いますが、賃貸住宅が100戸あったら、そのうち1戸は家賃滞納状態。

すごく身近な問題だといえるでしょう。

 

家賃が払えないほどの状態になるのは、やはり低所得者に多く、なかでも問題視されているのが、単身の高齢者です。

 

総務省統計局『令和2年 国勢調査』によると、高齢者の約5人に1人が一人暮らし。

さらに住居の状況をみていくと、持ち家率が66.2%、公営・都市再生機構(UR)が11.6%、民営借家が21.7%。

単身高齢者の3割強が賃貸暮らし。ちなみに、同世代の二人以上世帯の持ち家率は9割弱と、圧倒的に持ち家派となります。

 

高齢者の収入源といえば年金。

厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金受給者の平均受取額(国民年金+厚生年金)は、65歳で14万5,557円。

70歳で14万3,755円。75歳で14万7,519円、80歳で15万7,097円、85歳で16万2,711円。

実際にどれくらい年金を手にできるかは一人ひとり異なるので一概にいうことはできませんが、単身のおひとり様高齢者、ここから家賃を払い、日々生活していくには、決して楽ができる水準とはいえないでしょう。

 

「ちょっと生活が苦しいから、家賃の安いところに引っ越そうか……」。

そう考えたとしても、実現には高いハードルがあります。

株式会社R65が行った調査によると、高齢者の4人に1人が「不動産会社に入居を断られた経験がある」と回答。

さらに「5回以上断られた」という経験がある人は13.4%にもなります。「引越しを考えたら、借りられるところがなかった」、ということも珍しくないのです。

 

家賃が高くても引越しができない…単身高齢者の特殊事情

 

単身の高齢者。

悠々自適というイメージがありますが、実際は自由な転居はハードルが高いなど、制限も多いもの。

さらに収入が年金に頼らざるを得ない状況では経済的な不安、さらには老いによって健康面においての不安も大きくなっていくでしょう。

そして自由というメリットも、次第に孤独というデメリットになっていきます。

 

厚生労働省『令和3年版高齢社会白書』によると、65歳以上の人の近所との付き合いの程度をみていくと、単身の高齢男性は「あいさつ程度」が52.0%、「つきあいはほとんどない」が13.7%。一方で単身の高齢女性は「親しくつきあっている」が34.6%、「あいさつ以外にも多少のつきあいがある」が28.4%。女性のほうが社交的で、男性のほうが孤独状態になるリスクが高いといえるでしょう。

 

そして「孤独死(誰にも看取られることなく亡くなっ た後に発見される死)を身近に感じる」という回答は、二人以上世帯では3割強であるのに対し、単身世帯では過半数を超えます。単身世帯は、より危機感が強いということです。

そして東京都監察医務院によると、東京23区内における一人暮らしで65歳以上の自宅での死亡件数は、2019年に3,936人。

約4,000人近い孤独死が発生しているのです。

 

家賃が振り込まれない……そこで大家は再三にわたり家賃を払うよう連絡するも音沙汰なし。

仕方がなく、強制執行の手続きを進めているなか、孤独死であったことが判明する。このようなケースは増加傾向にあります。

 

結婚しなかったり、またはパートナーに先に絶たれたり。

高齢者が単身である理由はさまざまですが、いまや孤独死は社会問題。

自身で孤独に陥らないよう対策を講じることはもちろん大切ですが、高齢者を孤独にさせない取組みも進めていかなければなりません。

2022/12/01 10:00

東京23区年収ランキング…1位「港区」と23位「葛飾区」、思わず唖然とする給与格差

一見すると同じなのに、知らず知らずにして生じている給与格差。男女、学歴、企業規模、雇用形態……さらに地域によっても、給与は大きく異なります。
総務省のデータから「東京23区の給与格差」をみていきましょう。
東京23区年収ランキング…1位「港区」と23位「葛飾区」、思わず唖然とする給与格差(写真はイメージです/PIXTA)

男女で、学歴で、会社の規模で…格差広がる「日本人の給与事情」

原油価格の急騰、四半世紀ぶりの円安水準、そして連日の値上げのニュース。

幅広い日常品の値上げラッシュに家計負担の増加も身に染みる、今日この頃。

さらにこの夏以降、コスト高を吸収できず、さらに価格に転嫁されていくといわれていますから、そろそろ、我慢の限界といったところでしょうか。

 

街中では参議院選に向けて、物価高騰対策が大きな争点になっていますが、専門家は「各党とも場当たり的」と分析。

またいつものように期待するだけで終わってしまうのか、それとも実行され、私たちの生活が楽になるのか……ぜひとも、後者であってほしいと願わずにはいられません。

 

そもそも急激な物価上昇も、私たちの給与がそれに伴い上がってくれれば問題のない話。

ただ各方面でいわれている通り、日本人の給与はこの30年停滞気味。

その間、規制緩和で非正社員が増加したこと、働く女性や高齢者が増えたことなど、労働者の構造が変わったことで、数値的に停滞しただけ、という意見もあります。

確かに「給与額の停滞」よりも「給与格差の広がり」のほうが、実感としてあるかもしれません。

 

たとえば男女差。厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、男性会社員の推定年収は546万円に対し、女性会社員の推定年収は385万円と、その差は161万円。

 

また同じ男性会社員でも、高卒の推定年収は478万円、大卒の推定年収は631万円、大学院卒の推定年収は793万円。最終学歴が高校か、それとも大学かで、153万円もの給与差が生じています。

 

企業規模ではどうでしょうか。

従業員規模10~99人企業に勤務する男性会社員の推定年収は454万円。

一方、従業員規模1,000人以上企業では643万円。企業規模によって給与差は189万円になります。

 

さらに雇用形態による格差もさらに大きなものがあります。

男性正社員の推定年収は571万円。

一方、男性非正社員では342万円と、その差は229万円。

積極的に非正社員を望んでいるのであればいいのですが、望まざるして非正社員という人にとって、この格差は残酷です。

 

都心の「港区」と下町の「葛飾区」…給与差3倍

さらに居住する地域によっても、給与格差は生じています。

都道府県別にみていくと、推定年収のトップは「東京都」で595万円。

一方、47位は366万円。同じ日本でも、229万円の給与差があります。

 

また「東京都」といっても、区が23、市が26、町が5、村が8と、62の市区町村があります。

23区だけみても、住んでいる人、働いている人はまったく違いますから、年収事情も大きく違いことは想像するに難くないでしょう。

 

総務省『令和3年度課税標準額段階別所得割額等に関する調』で、東京都23区、それぞれの年収事情をみていくと、トップは都心に位置する「港区」で1,184万6,562円。

23区で唯一、1,000万円の大台を突破しました(関連記事:『最新「東京23区平均年収ランキング」…2021年度データで算出』

 

「港区」といえば、青山や白金など、全国区の高級住宅地が点在。さらに高さ60m・20階以上の高層マンション、いわゆるタワマンが多く集積し、成功者が住むエリアというイメージが強いエリアです。

東京商工リサーチ『全国「社長の住む街」調査』では、住民の7人に1人は社長という、驚くような結果が出ています。

 

一方で23位は東京都の東部に位置する「葛飾区」で356万8,147円。

1位「港区」とは、同じ23区とはいえ、実に3倍近くの給与差が生じています。

 

同じ23区でこの給与差。その原因は色々と考えられますが、そのひとつが就業構造。

「葛飾区」をはじめ下町は、職住一致の中小零細工場、いわゆるブルーカラーが多く、管理的商業や専門的技術的職業の人が多く住む都心地域と比べて、平均給与で比較した際に、見劣りがしてしまいます。

 

50年前、都心と郊外区の地域では給与差は1.5倍程度でしたが、都心から工場が移転し続けたことで、都心のホワイトカラーの比率は拡大の一途。

それにより、都心と郊外の給与差は3倍にまで広がっていったのです。

 

このように東京23区だけに注目しても、給与の地域間格差が生じていること、それが就業構造の違いによるものだということが分かりました。

今後、街の変化によっては、都心とそれ以外の格差は縮まっていくかもしれません。

2022/11/30 10:07

平均月給35万円…日本のサラリーマン「唖然の手取り額」に「もう、ムリ」

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(写真はイメージです/PIXTA)

行動制限解除に伴い賃金アップも、生活は楽にならない不思議

 

[図表]実質賃金指数、前年同月比の増減率 出所:厚生労働省『毎月勤労統計調査』より作成

給与が増えないなら投資で増やす…とはいかない、哀しい日本人

 

2022/11/29 11:00

夫婦2人世帯の平均年金受給額は? 年金だけで暮らす世帯の割合はどれくらい?

 

夫婦2人世帯の平均年金受給額は? 年金だけで暮らす世帯の割合はどれくらい?

 

老齢厚生年金の受取額の平均は1ヶ月14万4366円

公的年金収入のみで生活する高齢者世帯は48.4%

公的年金収入のみで暮らす世帯は48.4%

2022/11/28 12:00

【32年で17兆円の増】消費税の歴史と日本経済の変化を振り返る

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日本ではバブル崩壊後に給与水準が伸び悩み、日経平均株価が崩壊前の水準に戻るまでには30年半という時間がかかりました。
 
本記事では、「失われた30年」と呼ばれる期間における消費税の推移を紹介した上で、消費増税と経済成長の関係性について解説します。

消費税の始まりと増税の歴史

日本での消費税の導入は1989年です。当初、税率は3%でした。

その後、1997年に5%、2014年に8%、2019年に10%と、3度の増税を経て今に至ります。
 
財務省は消費税の増税について、次の3つの主張に基づいて国民に理解を求めています。

(1)高齢化が進む中で特定の世代に負担が偏らない財源を確保する必要がある
(2)景気(経済動向)などの変化に左右されにくい財源を確保する必要がある
(3)経済活動に対する影響が相対的に小さい財源を確保する必要がある

出典:財務省 「なぜ消費税か」
 
ここで注目したいのは(3)の「影響が相対的に小さい」という表現です。

増税前まで1050円だった商品がいきなり1080円、1100円と値段が上がることは、本当に「経済活動に対する影響が相対的に小さい」と言い切れるでしょうか。
 

税収と経済の変化

ここで、消費税の導入によって日本の税収や経済がどのように変化したかを振り返りましょう。
 

税収の変化

財務省の税収に関する資料によると、2022年の税収(予算額)は65兆2000億円となり、

過去最高となっています。32年前(1990年)の税収は60兆1000億円だったため、5兆1000億円増えています。
 
1990年と2022年予算で所得税、法人税、消費税の税収は図表1のように変化しています。
 
図表1 所得税、法人税、消費税の税収(1990年と2022年の比較)


出典:財務省 「税収に関する資料」より筆者作成
 
消費税が32年間で17兆円増えたにもかかわらず、全体の税収は5兆1000億円しか増えていません。
所得税や法人税が1990年と比べてそれぞれ5兆円前後の減収となっており、個人や企業の稼ぐ力が落ち込んでいる実態が伺えます。
 

 

日本経済の変化

所得税や法人税が落ち込んでいる背景には、経済の低迷があります。

日本は1990年に入ってから株価が下落基調に転じ、その後も長い不況が続きました。

給与が伸び悩んだのも1990年代に入ってからです。
 
バブル崩壊後も日本の名目GDP(国内総生産)は辛うじて増加基調を維持しましたが、1997年に消費税が5%に増税されると減少に転じました。

2019年に消費税が10%に増税された後も、GDPは減少しています。

1997年と2019年の増税後には、それぞれアジア通貨危機と新型コロナショックが発生しています。

この事実を基に「消費増税とGDP低迷の因果関係は実証できない」という考え方もあるでしょう。

ただ、たとえ外的な要因が作用したにせよ、一時的な株価変動によって景気が動揺する程度の経済状況下で増税に踏み切ったことの是非については、

検証の余地があるといえます。